Vol.92 _ 鈴鹿市

shellfish 邸

MESSAGE FROM 加藤純先生・竹内美穂(建築家:作人)

私たちがmさん邸の家づくりに携わって、印象的だったことは、まずその「立地」でした。
敷地は、比較的新しい住宅地の入り口にあり、南/北/東の3方が道路でほぼ死角がない状況の上、敷地南側の幹線道路の向いには、8階建てのマンションがそびえ立っていました。『前後左右、さらに上!』と、全周囲からの「視線」に対するプライベートの確保がご要望かつ課題であり、更に、この住宅地で「視線」を浴びる建物になることは歴然でした。
そのような理由で、心地よい?重圧と共にはじまったプランニングだったと記憶しています。


計画を進める上で、家の南側に大きな窓を設けても、夏の高い日差しが入るだけで、冬の低い日差しでは寒い時期に日照が得られないことが問題点でした。
それならばいっその事、南側を閉ざして、東側の光を主体に取り込んで見ようと考え、東側に空と緑の見える中庭を主軸として配置計画をしました。
さらに、生活の主体となる空間(LDK)と中庭との関係性を考え、光の取り込み方や空間ヴォリュームの操作によって、中庭への方向性を与える構成としました。


この通常の「南窓至上主義」を覆す提案に対して、模型をじっと見つめて考えて、OKをくださったmさんご夫妻の「想像力と判断力」には、今でも脱帽で、印象に残っています。
また、家の基本プランや概算見積も出来上がった際のこと。印象的というよりも衝撃的なことがありました。 mさんが申し訳なさそうに「実は、ガレージに屋根がほしいのですが・・・家に合わせて、デザインをお願いしてもいいですか?」と、更なる展開となる課題を頂きました(笑)。


そこから、工事にかかるための実施設計の打合せの合間に、何度もガレージの打合せをしました。 それは、木構造で可能な範囲の大開口を確保し、車庫入れを楽に出来て、車2台+バイクや自転車を停めるられるガレージ、という内容の計画でした。 結果、壁の足元を斜めにカットしたデザインのガレージが、家の顔とも言える存在になりました。 このガレージもまた、mさんご夫妻の豊かな感性なくしては、実現していないと思います。


ところで、この家の名前である<shellfish>の意味は、『甲殻類』です。
「貝」が閉じた状態ではほぼ内部が伺えないことや、「海老/蟹」の関節やエラなどが、独特の機能形状となっている「殻」のシェルターと、この家のプライバシーを確保するための様々な機能形状に共通点があること、そして、この家の立っている地域が、海に関係する名称であることから名付けています。


mさんご夫妻は、家と家族構成の変化をほぼ同時に体験されてきました。
これからもお子さんの成長と共に、ますます変化して行くmさんご家族ですが、「海老で鯛を釣る」ことわざのように、この家<shellfish>で感性豊かな家族の暮らしを獲得されることと想像しています。

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