Vol.89 _ 鈴鹿市

稲生塩屋-K/S 邸

MESSAGE FROM 石丸信明(建築家)

10間の長さの瓦屋根


二世帯住宅は、まずは大人が4人存在します。
それぞれの人には、家庭以外に会社や組織の世界や趣味の世界があります。
4人は夫婦であり、親子でもあるのですが、
もともとは他人が一緒に暮らし始め家族が増えていきました。
あたかも、大きな桑の葉があり、蚕(かいこ)が葉を食って繭(まゆ)を作り、その中でさなぎ
になり、成長し蚕蛾(かいこが)として巣立っていく。
イエという存在は、家族にとって大きな桑の葉のような存在です。


しかし、成人した人間は、自我があります。
集団の生活と、自分だけの世界が両立しなければなりません。
趣味も、考えも、感性も、時間帯も違う四人が、気持ちよく生活するためには、
適度な距離感と自分なりのテリトリーが大切です。


二世帯住宅を建てるとは、まずはその大人四人の距離感とそれぞれのテリトリー
を設定し直すことです。その過程で、物事を決定する根拠が、どこにあるかわか
らない場面が多々登場します。しかし、粘り強く、皆さんが納得して頂けるまで
話しあうことしか道はありません。


今回、10間の長さの瓦屋根の大方針は決まっていましたが、そのスペース的な調
整代は外部空間でした。縁側がある庭。趣味のバイクが入り込める趣味室。2階
のバーベキューが可能なバルコニー等。


この新しい二世帯住宅は、それぞれの居場所ができ、それぞれの固有の時間を紡
ぎ、気持ちのいい生活ができる豊かな空間となりました。いつまでも3世代が今
を大切にし、笑い声の絶えない家であることを願っています。

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